Web広告は今や主流の集客方法で、これは不動産業界においても同じことが言えます。
2023年では、インターネットを利用して賃貸物件を探している世帯割合は半数を超え、世代によっては70%を超える割合にまで増えています。
さらにスマートフォンの利用率は90%を超えており、スマートフォンでの家探しが当たり前になってきています。
不動産業界では不動産情報(ポータル)サイトが集客の主流になっており、効率的・効果的な手段として活用されています。
しかしインターネット広告においても情報掲載に関する禁止ルール等があり、その取り締まりは年々強まっているように感じます。
今回は、そんなインターネット広告における物件情報掲載に関して、不動産広告違反や一般消費者の信用失墜につながるかもしれない注意点について解説します。
「おとり広告」は不動産業界に携わる人なら誰しもが聞いたことがあるワードだと思います。
このおとり広告とは、架空の物件情報を掲載することだけではなく、物件に関する「家賃」「面積」「物件写真」などの情報の虚偽も含まれます。
実は年間100社前後が自社サイトやポータルサイトから「おとり広告」の摘発を受けており、取締りを受けるとポータルサイト掲載禁止、業務停止命令、重いケースで免許取消しや罰金などの行政処分の対象にもなります。
掲載物件に外観写真と間取り図しか掲載されていない情報をよく見かけますが、これらの情報を見た一般消費者にとっては問い合わせをするに至る情報が不足しており、躊躇してしまうきっかけにもなります。
サイトによっては最低でも写真を2枚以上掲載しないと物件情報の登録ができないものもありますが、「掲載する目的=反響を得ること」を考えると最低でも20枚は掲載した方が良いでしょう。
こちらも写真枚数と少し似たポイントになりますが、物件情報を閲覧する一般消費者にとって居室・リビング・水回り(キッチン・浴室・トイレ)の写真は重要視するポイントです。ファミリー向けの物件になると実質の決定権は女性というケースも多いので、これらの部分は外せない要素になります。
逆に、これらの情報もしっかり掲載されていれば、確度の高い問い合わせ反響や内見数も多くなるはずです。
よって、最低限でも居室・リビング・水回りの写真は掲載した方が良いでしょう。
新築物件や既に建設済みでも外観3Dパース写真を利用しているケースも多く見かけますが、外観3Dパース写真は「おとり広告」で取締りを受ける可能性が高くなります。
外観3Dパースの方が綺麗な印象を与えることができるので使用するケースもあると思いますが、いくつか「おとり広告」になり得る落とし穴があり、これは不動産公正取引協議会でも「不動産広告のルール」で発信されています。
ポイントは主に2つあり、「3Dパースの外観の周辺環境」と「築年数による劣化具合」です。
3Dパース写真をよく見ると、3D外観の周囲の雰囲気が緑や木に囲まれている写真がありますが、これは実際の建設箇所の周囲の状況と異なる場合、「おとり広告」となります。
もちろん実際に建設する建物の周辺が緑や木に囲まれている場所であれば問題ありません。
建物そのものではなくても、建物を取り巻く環境が事実と異なる印象を与えてしまう写真は掲載しないように注意しなければいけません。
築年数による劣化具合についても、築年数が何年も経っていて新築3Dパースを使用している場合は、実際の物件の状況と見比べて現況との差がないかを注意深く確認しておく必要があります。
間取り図に関しても現況通りの間取り図を利用していない物件情報は「おとり広告」になる可能性が高くなります。
同じ物件であれば、左右が逆転している「反転タイプ」の間取りのお部屋もあり、間取り図の下に「現況とは異なります」などの文言が記載されている物件情報も多くあります。
ですが、たとえ補足の文言を入れていたとしても「おとり広告」扱いとなります。間取り図の作成はある程度の時間を要するため、すでにあるデータに注釈をつけて使い回すというやり方が多くの現場で発生しています。業界に知見のある人であれば、そのデータでも想定できるかもしれませんが一般消費者には通用しません。おとり広告の取締りを受けて行政処分になるリスクも考えたら、時間と労力をかけて1つずつしっかり間取り図を作成した方が良いでしょう。
これは別視点からの注意点ですが、レインズやポータルサイトには、すでに他の不動産会社が物件写真や間取り図を掲載しているので、その画像をコピーして使用する会社も少なくありません。
確かにコピーすれば撮影業務の負担がなくなりますが、これはいくらコピーできたからと言っても無断転載なので著作権違反で訴訟になるリスクがあります。
無断転載をした会社は楽に効率的に画像を手に入れていても、その画像を準備した会社は労力と時間をかけています。また、掲載元に許可をもらえば転載しても良いわけではありません。それは掲載元がその画像の著作権者だとは限らないからです。近年ではこの「著作権侵害」に対する罰則は厳しくなっています。故意でなくとも罰則となりますので、リスクを避けるためにも無断転載はしないようにしましょう。
「おとり広告」による摘発は、物件情報を探している一般消費者からの口コミやポータルサイト運営事業者の定期調査によって調査が開始されます。
これらの注意点に気をつけながら、一般消費者が求める物件情報を掲載すれば、反響数も上がり、企業イメージアップにも繋がります。
おとり広告や無断転載のルールを見直し、違反のない物件情報掲載を心がけましょう。